プラグ

シグナル・パスで最も見過ごされがちなのが、地味な存在の3.5ミリフォノコネクターです。ほとんどのメーカーがスタンダードで安い3.5ミリのプラグを使用していますが、「安い」という言葉も「スタンダードな」という言葉もDitaのプロダクトとは無縁のものです。市販されているプラグを大量に使って実験してみたところ、どれも何らかの理由でDitaでの使用に足るものではありませんでした。それはつまり自社で他社より音質的にも人間工学的にも優れた新しいプラグを設計しなければならない、ということでした。最終的には以下の長所があることから、カーボンファイバーをコネクターの理想的な素材として採用しました。 

  • 共振特性上、他の合金に比べて音質的に優れている
  • 無磁気で、うず電流を発生させない
  • 錆びたり腐食したりしない耐久性
  • 軽量


スマートデバイスから直接使用する時にも、最近人気のポータブルアンプで使用する時にも極力邪魔にならない、ちょうどよいサイズにする必要がありました。同時に、イヤホンに使用する特殊ケーブルが接続できるだけの大きさが必要であり、またイヤホンで最も頻繁に触るパーツの一つであるからには、つまみやすいグリップ感も必要でした。 

もう一つ見落とされがちなDitaのプラグの特徴は、コネクターの一部になっているオフセットです。(写真挿入)このオフセットは、厚めのスマートホンケースを利用されているお客様には特に便利なものです。何百種類ものケースや市販の人気デジタル・オーディオ・プレーヤーで実験をして、やっとたどり着いたシンプルなソリューションでした。単純なことほど、日々使用する中で当たり前に感じてしまうものです。しかし、こういった単純なことも、使用時の嫌悪感やわずらわしさにつながりやすいため、デザインを進める中で軽視してはならないことであると考えています。 



ケーブル

Ditaでは、ケーブルひとつひとつが固有の音の形を持ち、物理的特性を有していると考えています。よいサウンドを実現できるケーブルを追求していくと、ひどい物理的特性をもったケーブルに仕上がってしまうことがあります。例えば、ケーブルから機械音がしたり引張強度が低下したり、ごわつき、からまりやすさ等が発生してしまうことがあります。数え切れないほどの実験を重ねて、Ditaは素晴らしいケーブルにたどり着きました。The Fat Cable と The Truth の誕生です。

The Fat Cable は以下の特徴を念頭に置いてデザインしました。

  • 究極的に透明感の高いサウントを実現すること
  • ケーブル由来のノイズを少なくすること
  • 柔軟性がありながら耐久性に優れていること
  • 悪い天候条件(暑さや寒さ)に耐えられること
  • からまりにくいこと



The Fat Cable の開発は、全体の設計プロセスの中でも特に課題の多い領域でした。イヤホン用のケーブルの開発に当たっては、重要な側面がたくさんあります。そもそも、イヤホン用ケーブルの使用に関わる最大の特性は、携帯性にあります。音声品質に加えて、しなやか、かつ柔軟で耐久性があり、製造過程においても扱いやすいものでなければなりません。つまり、ケーブルの直径、ジャケットの素材構成、導体の折組織に少しでも変化があれば、その変化が上記の特徴項目も劇的に変えてしまう可能性があるのです。使用した染料の色でさえ影響を与える場合があります。従来からの家庭用音響機器であれば、こういった構造への狂信的なまでのこだわりを避けることも可能でしたが、ポータブルデバイスにおいてはそれが、商品の品質へのこだわりと同義とも言えます。こういったごく小さなディテールに至るまでにきめ細かに着目することで、Ditaは他社とは一線を画したプロダクトを作り出すことができるのです。 

The Truth ケーブルは Dita Audio と Van den Hul のコラボレーションの集大成です。Ditaから最初に A.J. Van den Hul 氏(オーナー兼デザイナー)に伝えたケーブルの概要は、とてもシンプルなもので「最高のケーブルをつくっていただきたい」というものでした。そして、30年にも及ぶ経験と芸術的な冶金技術を駆使して The Truth(真実)以外の名前は考えられないような純度の音質を実現するケーブルが誕生したのでした。 


シャーシ

アルミニウムの塊から圧延してつくりました。押し出し成型でも、打ち出しでもなく、プラスチックでもありません。イヤーピースの全ての部品が、コンピューター数値制御された最新の多軸機械を使用した圧延又は施盤によって、あるいはその二つの組み合わせで作られています。

多くのメーカーがシャーシにプラスチックを採用する中、Ditaは、少し違う視点で考えてみました。廉価で、軽量で、大量生産しやすく、素材のムダも最小限で済む素材をなぜ使わないのでしょうか。何と言っても廉価なのですが・・・問題は、プラスチックがサウンドに「プラスチックっぽさ」あるいは「プラスチックの形跡」を強く残すことなのです。この影響を避けるためにはゼロからシャーシを作り変えるしかありませんでした。Answerシリーズ以降のDitaのシャーシに使われている全てのパーツは、6063-T6アルミニウムの塊から最新の多軸加工が可能なコンピューター数値制御(CNC)マシンを使用して細部にまで気を配りながら圧延又は施盤して作ったものです。ここまで極端に高度な製造プロセスを採用しなければ、認識可能な音への影響をほぼ全て排除して、反響を最小限に押さえ、最大限のダイナミクスを達成したシャーシをつくることはできませんでした。また、その結果、最適なエア・フローを手に入れ、歪みや不要なコンプレッションを排除して、ドライバーのポテンシャルを最大限に引き出すことができました。ほぼ全てのスピーカーに関する評価記事が、ボックスへの影響に言及すると思われます。これはボックススピーカーのデザインの非常に重要な要素であり、現代のイヤホンデザインではひどく見過ごされてきた領域であると考えています。イヤホンにおいても発生するボックスへの影響を最小限に抑えたいと考えたDitaは、この領域に研究開発予算と開発時間の多くを投下してきました。

イヤホンの密着度を損なわれにくくするため、重心はかなり耳の近くに置きました。同時に、シャーシを耳の近くに置き、人間工学的に快適な装用感になるようケーブル配線を見直しつつ、耳の上を通るケーブル配線によってケーブル由来の微小音を低減することができました。

エルゴノミクス、デザイン、装用感、そしてイヤーピースの仕上げが「Ditaエクスペリエンス」と呼ぶにふさわしい品質につくり上げるためにも、多大な時間をつぎ込んできました。

 

ドライバー

トランスデューサーは、ダイナミックドライバーを使用した音声機器の肝とも言えるパーツです。イヤホンの設計に着手する前に、まずは適切なサイズとパフォーマンス特性を持つトランスデューサーを確保する必要がありました。

究極のトランスデューサーを探し歩く中で、Dita は超軽量、超高速の精密なドライバーを自らつくり出すことになりました。軽さと精緻さを組み合わせることで、なめらかで広帯域幅の応答曲線が得られるようになると同時に、驚くほど高速でインパルス応答が得られるようになりました。

ダイナミックトランスデューサーを使用するべきである、という信念が、Dita のプロダクトを際立たせています。ハイファイのサウンド再現にこれほどダイナミックドライバーが使用されていることこそが、ダイナミックドライバーの今後長くに渡る実用的価値の証と言えます。単一のドライバーを使用することによって、フェーズの問題からさらに一貫性の問題に発展する可能性もある複雑化したクロスオーバーデザインについても悩まずに済むのです。家庭用ラウドスピーカーについては、最高のサウンド品質を確保するためのデザインとして、クロスオーバーに最高級のパーツを使用する余裕があります。しかし、そういった最高級のパーツは小型製品にまで下りて来ていないのが現状です。このため、ハイファイ関連業界以外から部品が調達されていることが多くなっています。これは、Dita では容認することのできない「妥協」に結びつく可能性があります。そこで市場の流れに従うのではなく、Dita の「気品あるシンプリズム、純度は限りなく高く」というデザイン哲学に従うことにしました。Dita は、クロスオーバーの無いダイナミックドライバーを一つだけ使うことでしか、音楽に対して誠実な、高度に正確で一貫性のあるサウンドを作り出すことはできないと考えています。
 

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